「湾生」とは  ―――――――――――――――
戦前の台湾で生まれ育った約20万人の日本人を指す言葉です。下関条約の締結された1895年から1945年までの50年間、台湾は日本に統治されていました。当時、日本から公務員や企業の駐在員が台湾へと海を渡り、農業従事者も移民としてその地を踏みました。そして、彼らのほとんどが敗戦後、中華民国政府の方針によって日本本土に強制送還されました。
引揚者が持ち出しを許されたのは、一人あたり現金1,000円(当時)とわずかな食糧、リュックサック2つ分の必需品だけでした。
湾生とは

「湾生」たちの望郷の想いに、台湾全土で16万の人たちが笑い、涙した。歴史に翻弄された人々の運命を描く傑作ドキュメンタリー映画、いよいよ日本公開!

解説

敗戦によって台湾から日本本土へ強制送還された日本人は、軍人・軍属を含め50万人近かったと言われています。彼らの多くにとって、台湾は仮の住まいの土地ではなく、一生涯を送るはずの土地でした。しかし残ることはできず、その願いはかないませんでした。そこで生まれ育った約20万人の「湾生」と言われる日本人にとって、台湾は紛れもなく大切な「故郷」でした。しかし、彼らは敗戦という歴史の転換によって故郷から引き裂かれ、未知の祖国・日本へ戻されたのです。

『湾生回家』は、そんな「湾生」たちの望郷の念をすくい取った台湾のドキュメンタリー映画です。異境の地となってしまった故郷への里帰りの記録です。ホァン・ミンチェン監督をはじめ製作スタッフは、戦後70年という長い年月を経るなかで、かつて20万人と言われた「湾生」が高齢化して、「湾生」が忘れ去られようとしている現在、台湾の人々の心とまなざしで、彼らの人生を、引揚者の想いを記録しました。

撮影隊は40名近い方に取材をし、そのうち6名の方の物語を中心に本作をまとめあげています。時の流れを超えて「湾生」たちは台湾で過ごした日々との再会を願い、失ったものを探し求めます。ある人は、幼馴染の消息に心を震わせ、ある人は自身のルーツを求めて台湾の地を踏み、またある人は、日本に引き揚げて初めて差別もあった台湾統治の真実を知ります。自分たちの居場所はどこなのか、台湾への里帰りは、戦争に引き裂かれたアイデンティティーを修復する旅でもあるのです。

この『湾生回家』は、台湾で3,200万台湾ドル(約1億400万円)、11週上映というドキュメンタリーとしては異例のロングランヒットとなりました。公開劇場数は50劇場を超え、16万人以上の観客数を記録。公開週より翌週の興行成績のほうがよく、口コミにより観客が増えていったことがうかがえます。劇場に足を運んだのは日本統治時代を知らない若者たちが多く、「湾生」たちの台湾に寄せる望郷の念に感動し、「湾生も自分たちと同じなのだ」と涙を流す観客も少なくなかったと言います。2015年の台湾でもっとも話題になったドキュメンタリー映画であり、中華圏最大の映画賞のひとつ「金馬奨」では最優秀ドキュメンタリー作品にノミネートされ、日本では、大阪アジアン映画祭2016で上映されて観客賞を受賞しています。